シリアを描いた映画

2011年のシリア紛争が始まって以来、シリアを描いた映画がたくさん発表されていますのでまとめてみました。

存在のない子供たち≪2019年/ノルウェー≫
わずか12歳で、裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親だ。裁判長から、「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に劣悪な労働を強いられていた。唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのは、さらに過酷な“現実”だった。果たしてゼインの未来は―。

希望の彼方≪2018年/フィンランド≫
内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手をさしのべ、自身のレストランへカーリドを雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた、行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていた。それぞれの未来を探す2人はやがて“家族”となり、彼らの人生には希望の光がさし始めるが…。

セメントの記憶≪2019年/ドイツ≫
中東のパリ、ベイルート。地中海を眺望する超高層ビルの建設現場でシリア人移民・難民労働者たちは静かに働いている。ある男が、出稼ぎ労働者だった父がベイルートから持ち帰った一枚の絵の記憶を回想する。絵には白い砂浜、青い空、そして2本のヤシの木が描かれていた。男が少年の頃初めて見た海の記憶だ。待ち焦がれていた父の帰還に少年ははしゃぐ。顔を撫でてくれた父の手はセメントの味がした。父は少年に語った。“労働者は戦争が国を破壊し尽くすのを待っているんだ”。男は異国で父への想いを巡らせる———
戦争と建設のイメージ。喪失と悲しみの記憶を詩的情緒豊かに紡ぐ圧倒的な映像美は、自らが生きている世界と同じ地平の中に傷ついた人たちがいることを伝える。祖国を亡命した若き元シリア兵のジアード・クルスーム監督が果敢に創り上げた革新的ドキュメンタリー作品!!

娘は戦場で生まれた≪2020年/シリア≫
2020年4月11日(土)よりシネマディクト(青森市)で公開開始。
ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。しかし、平和を願う彼女の想いとは裏腹に、内戦は激化の一途を辿り、独裁政権により美しかった都市は破壊されていく。そんな中、ワアドは医師を目指す若者ハムザと出会う。彼は仲間たちと廃墟の中に病院を設け、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療にあたっていたが、多くは血まみれの床の上で命を落としていく。非情な世界の中で、二人は夫婦となり、彼らの間に新しい命が誕生する。彼女は自由と平和への願いを込めて、アラビア語で“空”を意味する“サマ”と名付けられた。幸せもつかの間、政府側の攻撃は激しさを増していき、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すことを心に誓うのだった。すべては娘のために――。

アレッポ最後の男≪2017年/デンマーク・シリア≫
5年以上も内戦が続くシリアの都市アレッポは崩壊の危機に瀕している。取り残された市民35万人は築かれつつある包囲網に逃げ場を失い、間近に迫る死に恐怖を懐きながらも何とか命をつないでいる。爆撃は、市民もろとも市街地を瓦礫へと変えていく。現場には自らの命を顧みず、生き埋めとなった生存者を救おうと駆けつける男たち「ホワイト・ヘルメット」の姿がある。絶望の淵で彼らが見せる勇敢さ、そして眼の前で進行する信じがたい不条理な紛争の現実に、私たちは何を見出すことができるのだろうか。

父から息子へ 戦火の国より≪2017年/ドイツ他≫
シリアの民主化を求めて奮闘する若者たちを追った「それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと」を手がけた、ベルリン在住のシリア人監督タラール・デルキが、父親がアルカイダ関連組織のメンバーである一家にカメラを向けたドキュメンタリー。シリアで活動するアルカイダの関連組織ヌスラ戦線のメンバーを父にもつ一家に客人として迎えれたデルキ監督が、戦火を目の当たりにする子どもたちの成長や、息子たちをイスラム国家の戦士に育てようとする父親の姿を見つめていく。

ラッカは静かに虐殺されている≪2017年/シリア≫
戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦。2014年6月、その内戦において過激思想と武力で勢力を拡大する「イスラム国」(IS)がシリア北部の街ラッカを制圧した。かつて「ユーフラテス川の花嫁」と呼ばれるほど美しかった街はISの首都とされ一変する。爆撃で廃墟と化した街では残忍な公開処刑が繰り返され、市民は常に死の恐怖と隣り合わせの生活を強いられていた。
海外メディアも報じることができない惨状を国際社会に伝えるため、市民ジャーナリスト集団“RBSS”(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)が秘密裡に結成された。彼らはスマホを武器に「街の真実」を次々とSNSに投稿、そのショッキングな映像に世界が騒然となるも、RBSSの発信力に脅威を感じたISは直ぐにメンバーの暗殺計画に乗り出す――。

The cave≪2020年/シリア≫
シリア内戦により荒廃した街の下には、包囲された市民に希望と避難の場所を与える地下病院があった。その病院で治療に当たるのが、小児科医であり病院の責任者でもある医師のアマニ・バロア。家父長制的な文化の中で働くアマニや同僚の女性たちは、男性と同等に働く権利を主張する。そして、日常的に続く爆撃や物不足、さらには化学攻撃の恐怖と闘いながら日々を過ごす。アマニを中心に、困難に立ち向かい結束する人々の姿を追う。