未来のアラブ人。自分は何者なのか。

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タイトルの『未来のアラブ人』は父が息子に言った言葉。アラブ世界が教育の普及により古い慣習から抜け出し、発展してほしいという願いを込めて。そしてこの本が問いかけるのは『アイデンティティ』とは何かということ…じゃないかと思ってます。

著者はフランス人とシリア人のハーフ。幼年期からの自伝的漫画で生まれてからのことが淡々と綴られています。あまりに淡々と綴られていて読んでいるとちょっと疲れる…というのが正直な感想。しかしそれが著者の狙いなのではないかと。

何か強烈なメッセージを発するよりも、著者が見たこと、感じたことが包み隠さず、良し悪しのフィルターを外してそのまま表現された漫画。生活の音や人のにおい、怖い先生、友達関係、政治情勢、汚職、宗教のこと…など。これが現実なんだと、子どもが見た世界なんだと。

それを読んだ読者がどう感じ、判断するのか。それらの国に滞在したことがある人は懐かしいと感じるかもしれない、行ったことがない人はなんて意味が分からない国なんだと感じるかもしれない。描かれている金持ちの様子や親が子どもを叱った後に強烈な愛情を注ぐ様子は懐かしい、と私は思いました。

一方で軍人に賄賂を渡して税関を通ったり、子どもが犬をいじめたり、汚い言葉で人を罵ったり、名誉の殺人であったり…と、日本では考えられないようなことも淡々と描かれています。でもこれが現実。

そんな中父が放った「未来のアラブ人は学校へ行くんだからな!」という言葉。この時も学校はありますし、著者も通ってはいるのですが。しっかり勉強して周りに負けない大人になるんだぞ、西欧諸国に負けない強いアラブを作るんだぞ、という想いが込められた一言…だと思います。血を流して争わず、考えて解決してほしいというところなのかもしれませんが、今でもそれが変わっていないのが残念です。

参考:HUFFPOST

そしてもう一つのテーマ『アイデンティティ』とは。これが漫画で描かれるのはおそらくもうちょっと先。でも著者がインタビューで話してました。自分はフランス人でもシリア人でもなく、本を作る人間の一人なんだと。

参考:nippon.com

そして自分が何者かは自分で選べばいい、と。自分がハーフで、幼少期からいろんな国で生活していると国籍なんてそんなに重要なことじゃない、と思ったのかもしれません。そんな経験をしたからこそ言える言葉。そしてそれを追体験できるのがこの漫画。何がいい悪いとは言わないけど、一緒に考えましょう、というのが私が捉えたこの漫画の最大のメッセージです。

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